税金・海外取引

海外取引先への請求書の出し方|チェックリスト

海外のお客様への請求書を解説。通貨、VATとリバースチャージ、源泉税、銀行情報と手数料、日付の書式、電子請求書をチェックリストで確認できます。

読了目安:6分

他の国のお客様と仕事をすると、市場が広がる一方で、国内の請求書では出てこない疑問が生じます。どの通貨にするか。VATを請求するか。お客様は税を源泉徴収するか。4,000ドルのはずが、なぜ3,955ドルで届いたのか。このガイドでは、答えをまとめ、それぞれのテーマを詳しく解説するガイドへ案内します。

国際的な税のルールは複雑で、ご自身とお客様の所在地や、販売するものによって異なります。このガイドは一般的な情報であり、税務上・法律上の助言ではありません。

1. 最初の請求書の前に基本事項を合意する

質問 重要な理由
どの法人宛に、どの住所で請求するか 多国籍企業には多くの法人があり、宛先を誤ると請求書が受理されない
どの通貨にするか 為替リスクを誰が負うかが決まる
税務上の番号、W-8様式、取引先登録は必要か 登録のない取引先には支払えない会社が多い
請求書に発注番号は必要か 大規模な組織でよくある
支払条件と支払サイクルは 国際送金では数日余計にかかる場合がある
電子請求書や取引先ポータルは必須か PDFを受け付けない国や会社がある

2. 通貨

双方が合意した通貨で請求し、金額の横にISOコード(USD、EUR、GBP)を示します。「$」だけでは曖昧です。お客様の通貨で価格を設定すれば受注につながる場合がありますが、為替変動のリスクを負います。ご自身の通貨で設定すれば、リスクはお客様に移ります。VAT登録事業者が外貨で請求する場合、EUや英国など多くの制度では、VATの金額を自国通貨でも記載する必要があります。詳細は外貨建ての請求書の書き方をご覧ください。

3. VAT、GST、売上税

重要なのは、どこで課税されるか、つまり「役務の提供地」です。サービスについての大まかなパターンは次のとおりです(物品のルールは異なります)。

ご自身が… お客様が… 一般的な扱い(簡略化)
EU、VAT登録事業者 他のEU加盟国の事業者 VATは請求しない。リバースチャージとなり、その旨を記載して双方のVAT番号を表示
EU、VAT登録事業者 EU域外の事業者 EUのVATの対象外となる場合が多い。請求書に理由を記載
EU、VAT登録事業者 他のEU加盟国の消費者 特定のサービスや通信販売では、EU全体で1万ユーロの基準額まではご自身のVAT。それを超えると顧客の国のVAT(OSS経由が多い)
英国、VAT登録事業者 英国外の事業者 事業者向けサービスは、一般ルールにより、英国のVATの対象外となる場合が多い
EU域外 EUの事業者 通常、請求書にEUのVATは不要。お客様がリバースチャージで自ら会計処理する
EU域外 EUの消費者(デジタルサービス) 最初の販売から、EUのVATの登録と請求が必要になる場合がある(非EU向けOSS)
米国の事業者 外国のお客様 輸出されるサービスの大半には米国の売上税がかからない。外国のVATはお客様の責任になる場合がある

例外は数多くあります。土地に関連するサービス、イベント、運送、消費者向けのデジタルサービスには特別なルールが適用されます。請求書のVATの扱い方と、米国側については米国の請求書と売上税をご覧ください。

日本の事業者が海外のお客様にサービスを提供する場合、内容によっては消費税の輸出免税などの扱いになることがあります。要件は取引の内容によって異なるため、税務署や税理士にご確認ください。

4. 源泉税

国によっては、お客様が外国のサービス提供者への支払いから所得税を源泉徴収し、自国の税務当局に納めることを義務づけています。そのため、請求書の合計より少ない金額しか受け取れません。2か国間の租税条約により、軽減または免除される場合があり、通常は、事前に居住者証明書や特定の様式を提供する必要があります。

  • 米国のお客様は、通常、米国外の業務委託先に、外国人としての身分と租税条約の適用を示すW-8BEN様式(個人)またはW-8BEN-E様式(法人)を求めます。
  • インド、メキシコ、ブラジル、フィリピンなどの国では、国境を越える一部のサービス料金の支払いに源泉徴収が課されます。

早めに確認し、価格が源泉徴収の前(総額)か後(手取り)かを契約書で決めましょう。

5. 国境を越えた入金

  • IBAN、BIC/SWIFT、銀行名と住所などの完全な国際送金情報を提供します。米国向けの場合は、口座番号とABAルーティング番号です。
  • 全額を受け取りたい場合は、お客様に手数料負担コードOURでの送金を依頼するか、手数料を価格に織り込みます。
  • お客様の通貨で現地の口座情報が得られる多通貨口座を検討します。お客様にとって安く速く支払えます。
  • 小規模なお客様には、カードやオンラインの支払いリンクが便利です。換算や決済の手数料を確認してください。

6. 言語、日付、書式

  • 言語:事業者間の請求書では英語が広く受け入れられていますが、現地のVAT上、公用語での請求書や、依頼に応じた翻訳を求める国もあります。
  • 日付:月は文字で書きます(「2026年11月3日」「3 Nov 2026」)。03/11/2026 は、米国の読み手には3月を意味します。
  • 数字:1.250,00 と 1,250.00 は国によって同じ意味です。通貨コードを書けば混乱を避けられます。
  • 住所:お客様の国の書式で、国名と郵便番号を含めます。

7. 電子請求書とポータル

国内の事業者間取引に構造化された電子請求書を義務づける国が増えており(イタリア、ポーランド、ベルギー。ドイツとフランスは段階的に導入)、大企業はしばしば取引先ポータルへのアップロードを求めます。外国の取引先として国内の義務の対象外であっても、お客様のシステムが特定の形式を要求する場合があります。電子請求書とはをご覧ください。

8. 海外への物品の販売

物品を発送する場合は、通関書類が加わります。HSコード、原産国、インコタームズ、重量を記載した商業インボイスに加え、梱包明細書や運送書類です。輸出用の商業インボイスとプロフォーマ・インボイスをご覧ください。

例:スペインのフリーランスが米国企業に請求する場合

項目 例
お客様 Lumen Software Inc.、500 Market St, San Francisco, CA, USA
通貨 USD
サービス プロダクトデザイン業務、2026年10月分 — 32時間 × USD 85
合計 USD 2,720.00
VAT 請求しない — EU域外の事業者へのサービス(スペインのVATルールに従った注記)
支払い USD建ての多通貨口座の情報で受領。手数料:OUR
書類 お客様がW-8BENを保管

(イメージ例です。必要な正確な文言は、現地のルールで確認してください。)

チェックリスト

  • お客様の正しい法人名、住所、税務上の番号
  • 通貨を合意し、ISOコードを表示した
  • VAT・GSTの扱いを判断し、請求書に記載した
  • ご自身のVAT番号(リバースチャージの場合は、お客様の番号も)
  • 必要な場合は、自国通貨建てのVAT額
  • 源泉税を話し合い、様式(W-8BENなど)を提出した
  • 国際送金の銀行情報と、手数料の指示
  • 日付を曖昧さのない形で記載した
  • 発注番号・取引先ID・ポータルの要件を満たした

国ごとの請求書の要件は、国別の請求書テンプレートにまとめています。たとえば、ドイツ、英国、米国です。準備ができたら、請求書作成ツールで通貨と税を設定してください。